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2015年7月5日日曜日

【小説的な何か?】

「・・・・・・ようやく足手まといがいなくなった。
 ここからは、手加減しない!!」

瞳が碧く輝き、普段小さな羽も体に不釣り合いなほど大きくなる。
そして周囲に放出される魔力も先程とは桁が違う。

「マ、イ。」

地上で座り込んで心配そうに見上げるユキの目には絶大な信頼が浮かんでいる。












「ユキちゃん、マイちゃん。
 悪いんだけど、魔界外縁のパトロールに行ってくれない?」

申し訳なさそうな笑顔でお願いしてくる神綺。
どう見ても魔界神の姿ではない。

「私は別にいいですけど、マイは?」

チラッとマイの様子を確認するユキ。

「ん、私も構わない。
 でもどうして突然?」

いつもの仏頂面で問いかけるマイだが、特に嫌がってるわけではないようである。

「うん、二人も知っての通り、いくら魔界が私の管理下にあると言っても、
 外縁になると力が及びにくくてね。
 魔界の外の無限領域から出現する魔物を全てを防ぎきれないの。
 ちゃんと対応戦力あるんだけど、今回ちょっと面倒なのが現れたみたいでね。
 ちょっと見てきてもらおうかと思って。」

真面目な顔で説明していた神綺は突然心配そうな表情になる。

「いつもは夢子ちゃんにお願いするんだけど、ちょっと、ね。」

「いえいえいえ!!
 私たちも神綺様に頼ってもらえて嬉しいですよ!!
 ね、マイ!!」

「べつに問題ない。」

暗い顔をしている神綺にわたわたと手を振りながら励ますユキにそれを少しニヤけながら見守るマイ。

「そお?本当に気をつけて行ってきてね。
 貴女達がいくら強いといっても無茶は駄目だからね。
 いざとなれば私が出向くから。」

わずかな殺気が一瞬現れるが、次の瞬間にはいつも通りの彼女に戻っている。

「と、とにかく行ってきます!!
 行くよ、マイ。」

この空気に耐えられなかったのか、マイの手を掴んで逃げるように立ち去る。

「マイ、さっきから何悩んでるの?」

パンデモニウムを出たところで何やら考え込んでいるマイにユキが声をかける。

「ん、辺境隊が対応できない魔物って何かなと。」

割と真面目な顔で考え込んでいるマイではあるが、ユキの次の一言でいつも思考停止するのがいつもの二人である。

「まあ考えてもしょうがないよ。
 とにかく行ってみよう!!」




〜〜〜ユキマイ移動中〜〜〜



「さて、着いた訳だけど件の魔物は・・・?」

ユキが興味深げに見回すが、それらしい姿はない。

「・・・探そう。」

マイが一言呟くと二人が宙を飛ぶ。

「居た。」

数十分探した所でマイがターゲットを見つける。
対応部隊を蹴散らしているようである。

***************意味のない用語解説****************
「辺境即時対応部隊」
魔界の辺境の守護をしている部隊の総称。
まだ空間として確定していない無限領域から現れる魔物が魔界神のはった結界をすり抜けてきた場合の緊急迎撃部隊のこと。
これらは魔界人と異なるプロセスで魔法を発動する。
なお、これらは魔界神の創造物ではあるが人ではなく、自律人形のようなもので自我は無い。
さらに空間中の魔力で破損が治るので、不死の兵士である。
****************************************


「人型?珍しいね。」

ユキも対象を見つけたらしく、戦闘モードの気配を発している。
本来この地に現れる魔物は異形が多い。
今目の前で対応部隊を蹴散らしているのは、小柄な少女に羽が生えたような姿をしている。

「・・・・・・・・・」

「マイ?」

何やら考え込んでいるマイに心配そうにユキが声をかける。

「いや、なんでもない。」

ユキの声にマイは考えるのをやめて、顔を上げる。

「それじゃ、行くよ!!」

掛け声とともにユキが飛び出す。

「ハァ!!」

ユキに合わせてマイが魔力弾を放つ。

「!!」

対応部隊を攻撃していた魔物が二人に気付き向きを変えた・・・時にマイの放った弾が着弾する。
的確に命中した攻撃は魔物の視界を奪う。

「まだまだ!!」

更に追い討ちをかけるようにユキが大量の魔力弾をばら撒く。
ばら撒かれた弾の一部が魔物に当たり炸裂する。

「おっしまい」

ふふん、と自慢気に宣言するユキ。
このコンビネーションは二人の攻撃パターンの一つで、奇襲に特化したものである。
大抵の魔物はこれで倒せる。

「っ!?
 ユキ下がって!!」

突然マイが珍しく声を荒げて叫ぶ。

「え?」

普段とは異なるマイの声にユキが咄嗟に反応できずにキョトンとした瞬間。
ユキの視界が白く染まる。

先程の攻撃の影響で煙にまみれた場所から一筋のレーザーが放たれていた。
レーザーが消えると同時に巨大な羽が煙を吹き飛ばす。
そこには先程の魔物が浮かんでいる、ほぼ無傷の状態で。


「・・・・・・・・・・・・。」

表情もなく、感情もないその姿は恐怖すら感じる。


「痛ぁ。」

ユキもレーザーの直撃を受けたものの、なんとか地上に落ちる前に姿勢を立て直す。

「無事?」

隣にまで追いついてきたマイが心配そうにユキに声をかける。

「大丈夫、だと、良かったん、だけどね。」

ボロボロになってようやく飛んでいるような状態のユキが息も絶え絶えになって答える。

「・・・わかった、ユキは下がって。」

唐突に無表情になったマイが突き放すように言い切る。
その一言にユキは特に傷ついた様子もなく一言

「待ってるからね。」

そう言って地上に降りていく。

「・・・・・・ようやく足手まといがいなくなった。
 ここからは、手加減しない!!」

瞳が碧く輝き、普段小さな羽も体に不釣り合いなほど大きくなる。
そして周囲に放出される魔力も先程とは桁が違う。

「マ、イ。」

地上で座り込んで心配そうに見上げるユキの目には絶大な信頼が浮かんでいる。

「・・・・・・・・・。」

魔物から先程よりも高密度の魔力のレーザーが放たれる。

「無駄」

マイが手をかざすと、そこから更に高密度で巨大なレーザーが放たれ、攻撃もろとも魔物を飲み込む。

「っ!!」

マイの攻撃により吹きとばされた魔物は、空間の境の結界に激突する。

「やっぱり、魔物じゃない。」

その瞬間マイは確信を得る。
通常の魔物であれば内側から結界に阻まれることはない。
そもそもこの結界は外から来る魔物を拒む物で、内から外に出る魔物を拒む物ではない。
だが、魔物でないものなら話は変わる。

「使徒・・・。
 なんでこんなところに。」

使徒、神界に住む神の尖兵とも言える存在。
本来魔界に現れるものではない。

「・・・!!」

マイが思考で動きを止めた瞬間、使徒が無数の羽のような弾幕を放つ。

「しまっ!!」

咄嗟にマイも弾幕で迎撃するが、反応が遅れたこともあり追いついていない。

「っく!!」

回避もできず、防御姿勢に入った瞬間
強烈な音ともに突然周囲の弾幕が消し飛ぶ。

「!!
 この!!」

その一瞬の隙間をマイは逃さなかった。
大量の巨大な弾幕と極太のレーザーを使徒に向けて放つ。

「!!?!?!??」

使徒は弾幕を放った反動で身動きが取れない。
空気を震わせる程の炸裂音が周囲に響き渡る。

「今度こそ終わり。」

そう言うと同時に魔力の放出は収まり、羽も普段の大きさに戻っていく。

「ユキ、大丈夫?」

地上で座り込んでいるユキの元に降り立ち、心配そうに声をかける。

「うん、大したことないよ。
 マイもご苦労様。」

ユキが笑顔で答えるが、怪我だらけで大丈夫には見えない。

「はいはい、無理しない。」

「ちょ、マイ!!」

呆れた様子でお姫様抱っこし始めるマイにユキが動揺して暴れ出す。

「こら、暴れない。」

マイが少し力を入れて抱きかかえると、ユキも観念して大人しくなる。

「あうぅぅぅ」

ユキの方も大人しくなったものの、恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。











ユキとマイが立ち去ったのち、その場所に残っている人影がある。

「・・・・・・。」

先ほどの使徒である。
かなりのダメージを受けているものの、なんとか移動している。
魔界には強大な戦力があることを神界に報告しに戻らなければならない。
そう考えている時

「神界の者が魔界に何の用でしょうね。」

背後から静かな声が聞こえる。

「!!」

その声に立ち止まるが、振り向けない。
それ程までに静かだが強力な圧力があった。

「神綺様からは手を出さなくていいと言われたけれど、
 出してはいけないと言われたわけではないし。
 ユキの恨みは晴らそうかしらね。」

平たい声と同時に刃擦れの音が響く。

「・・・・・・・!!」

使徒は向けられた殺気で身じろぎ一つできない。

「では。さようなら。」

短剣が一閃される。
次の瞬間その場には無数の白い羽が落ちているだけであった。





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迷走しましたごめんなさい。
マイにあの台詞言わせたかったんです。

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