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2014年9月23日火曜日

【小説っぽいもの】第4弾 紅き女王と紅に染まった従者

めっさ短い短編小説です。
軽いレミフラとレミ咲が含まれます。
ちょっとグロい画像があるので一応注意。

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今宵は普段と少しだけ違う夜であった。
今日フランの居る地下室には、いつもなら居る筈のレミリアの姿は無く、代わりに咲夜が居た。



「フラン様、申し訳ありませんが今宵レミリアお嬢様は自室で書類整理をしておりますので、代わりに私がお相手させて頂きます。」

咲夜は丁寧な口調でそう言った。

「あ、あはは。ま、まあ、あれはお姉様が悪いかなぁ。」

フランは少し引きつり気味な笑顔でそう答える。

表向きは書類整理という事になってはいるが、詰まる所レミリアは悪戯が過ぎて部屋に閉じ込められているだけである。
何があったかは皆口を閉ざして語らないが、一様に口を揃えて言う所が一つ。
「「「あそこまで怒った咲夜は始めてみた。」」」
この一言である。

普段、フランは寝る時にレミリアが寝かし付けて貰う事が多い。
地下を出てしばらく経つが、未だに夢でうなされているからである。
率先してレミリアがやりたがる為、周りは任せっぱなしな事が多い、フランの方も満更でもない為何も問題は無かった。

「ん〜、折角だし咲夜。何か話してよ。」

ベッドに座って足をパタパタさせながらいう。

「寝なくとも大丈夫ですか?」

「うん、正直お姉様じゃないと落ち着かなくて。ごめんね。
 咲夜こそ寝なくて大丈夫?」

「大丈夫ですよ。一日や二日寝なくても問題ありません。
 一時は一週間近く不眠不休で動いてた事もありますからね。」

咲夜は少し自慢げに答える。

「す、すごいね。」

「しかし、何をお話しすれば良いでしょうか?」

そう答えながら咲夜はフランの隣に座る。

「そう言えばどうして咲夜はお姉様のメイドになったの?」

少し首を傾げながら聞くフランに少し考えてから咲夜は答える。

「ではその辺りも含めて少し昔話をしましょうか。」

「うんうん!!」

興味津々に頷くフランに咲夜は話し始める。
紅く染まった過去のレミリア・スカーレットを。






当時、レミリア・スカーレットは人妖問わず恐れられていた。
人間からは討伐対象とされ、妖怪からは敵視されていると言う事である。

レミリアは不定期に現れる敵対勢力を徹底的に叩き潰して回った。
教会が刺客を送れば、返り討ちにした上で教会のある町を火の海に変え、
妖怪の挑戦者が現れれば再起不能にまで叩き潰した。

この姿からスカーレットデビル(紅き悪魔)という異名が付いたとも言われる。



その日は満月、吸血鬼が最も力を発揮出来る日であった。
だがそれは同時に弱点である銀等の魔術的道具が最も良く効く日でもあった。
満月というのは昼間と同じレベルで狩る側としては条件が良いのである。
そして日中吸血鬼は己の館から姿を現さない。
つまり最も危険で最もチャンスの多い日であり、腕に自信のある者は敢えて満月を選ぶ事も多かった。

そしてこの日もまた、腕に自信のある吸血鬼ハンターが集っていた。
皆それぞれの得物を持ち、強大な吸血鬼を討ち果たす為の牙を研ぐ。

その中に一人、まだ子供と言える年頃の少女が居た。
その少女は最近になり頭角を現し、数々の名のある吸血鬼を狩っていた。
今回の討伐隊参加者の中でも一目置かれる存在である。
だがその少女の名前を知る者は居なかった。
名前がないのだ、という噂もある程に。

過去幾度も討伐部隊を放ち、悉くが全滅し、手ひどい反撃を被っている。
だが今回、教会も時間をかけて準備をしており、過去これほど大規模な討伐軍が編成された事はなかった。
それも数だけではなく質も揃った最精鋭「だった」。



戦いはあっという間であった、少なくともその場に居た全ての者にとって一瞬の出来事であったに違いない。
館の前に布陣し、これから攻撃しようと言うときに「彼女」は現れた。
見た目まだ幼く、可憐な少女であった。
片手に血の様に紅く輝く身長より大きな槍を持っていなければ。
彼女は全くの無表情で、多数確認されている配下も連れず、たった一人で、小細工も無しに館の門の上に立っていた。
それを見た多くの者が勝利を確信し、攻撃をしようとした。
次の瞬間勝利の確信は絶望の悲鳴に変わった。
彼女が紅く輝く槍を投げる、同時に部隊の先頭に立つ今回の討伐隊で最も勇敢で腕が立つと評判だった部隊長とその周囲に居た腕利きのハンター達が文字通り「消し飛んだ」。
更に次の瞬間には「彼女」は槍を掴み数多くのハンター達を薙ぎ倒して行った。
既に統率などという物はなく、自分が生き延びる為に目の前の敵に向かっていた。
一時間も経っていないだろう、「彼女」の周囲には降り注ぐ血の雨と人間「だったもの」の混ざった血溜まりしかない、筈だった。
だが「彼女」の目には違う者が映っていた。

「・・・・・・・・・レミリア・スカーレット。」

名も無き少女はこの絶望の中で立っていた。
少女以外のハンターは一人残らず死んだというのに、逃げるのではなく向き合っていた。
その目に映る絶望の源泉から決して目を離さず、真っ直ぐに。


「なかなか腕が立ちそうね、さっきの連中よりは楽しませてくれるのかしら?」

感情の籠らない声で「彼女」は問う。
明らかに戦いを楽しんでいる風ではない。
だがその殺気は尋常でなく、周囲が震えている錯覚すら覚える程である。
その姿は悪魔というよりも女王、夜を統べる者と言える。

「・・・・・・・・・。」

少女は何も言わない、否、言えない。
既にナイフを持つ手は震え、足が竦み、過去多数の吸血鬼を葬った時を止める能力は恐怖で扱え無くなっている。
今すぐにでも逃げ出したい、でも背を向ければ必ず「彼女」の持つ槍が私の身体を貫く、ならばせめて向き合って死ぬ。
その信念だけが少女の意識を繋ぎ、「彼女」と向き合わせている。

「・・・ふふ、気に入ったわ。」

「彼女」は突然笑い出した。

「さっき私は確実に皆殺しで行くつもりで槍を振るったのに、貴女はこうしてまだ私の前に立っている。合格点ね。」

気が抜けたかの様に笑顔になる「彼女」を見て少女は思ってしまった。
「美しい」と。

「貴女、私の館でメイドをしてみない?なかなか便利な能力を持っている様だしね。」

この一言を少女は断れなかった。
ただ呆然と頷くだけだ。

「じゃあ、貴女はもう人間の世界に居るべき場所は無い。
 だから代わりに私が居場所を与えて上げる。
 今日この時から貴女は、私レミリア・スカーレットの従者。
 【十六夜 咲夜】よ!!」

周囲には死が溢れ、見渡す限りの血の海である事を忘れさせる清々しい笑顔と自分に居場所が出来た事実に、少女は無意識に涙を流していた。

こうして紅き女王に一人の従者が増えた。






「っと、こんな様な事があったのです、よ?」

咲夜が語り終え、隣を見ると。

「すーすー。」

いつの間にか咲夜の方にもたれ掛かってフランは眠っていた。
特にうなされている様子は無いようだ。

「私とした事が、少し夢中になり過ぎてしまったわね。
 お休みなさいませ、フラン様。」

フランを改めてベットに寝かせ、立ち去ろうとすると。

「咲夜ぁ、ずっと側に居てね。ムニャムニャ」

フランのその言葉を聞き、咲夜は少し諦めた様に一人呟く。

「私はいつでも側に居ますよ、お嬢様方の存在が私の居場所その物なのですから。」




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これにて、この物語はお終いです。
ちょっとシリアス混ざりの展開で結構苦戦しました。
ご意見ご感想なんかコメントして頂けたら私が歓喜します。



お ま け
【翌日】
レミ「さぁ〜くぅ〜やぁ〜。」

咲「ど、どうなさいましたお嬢様?」

レミ「私の毎日の楽しみであるフランの寝顔を奪った感想は如何かしらぁ〜?」

咲「ふふ、そうですね。私は幸せ者ですわ。」

レミ「?」

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